屋根・屋上での親綱の使用方法と墜落防止対策
屋根作業時の親綱は、作業者の命を守るための不可欠な装備です。親綱を適切に設置・使用することで、もし墜落事故が発生しても、作業者の安全を確保できます。
この記事では、屋根作業時の親綱の適切な使用法や、墜落を防ぐための製品について詳しく解説します。記事を通じて、屋根作業の安全性を高めるための環境整備の参考にしてください。
屋根作業における親綱は「作業者の安全を守る役割」を持つ
屋根作業における「親綱」は、高所で作業する作業者の安全を守る役割を担っています。屋根の上に取り付けた2本の支柱の間にロープをピンと張り、そこに墜落制止用器具を引っ掛けることで、万が一高所から墜落した際に、地面への激突を防ぐことができます。
もし、正しい方法で親綱を張らずに作業して屋根から墜落してしまうと、大切な作業者の命を失うことになるかもしれません。安全に工事を終わらせるためにも、正しい親綱の設置方法を知っておきましょう。
親綱の具体的な設置方法
親綱の具体的な設置方法は、大きく以下の2種類に分かれます。
- 水平親綱
- 垂直親綱
それぞれで設置のポイントが異なるためチェックしておきましょう。
水平親綱の設置方法
水平親綱とは、屋根の上に水平に設置した親綱のことです。具体的には以下の手順で設置しましょう。
まずは屋根の上に親綱支柱を設置します。親綱支柱とは、安全フックを引っ掛けて親綱をピンと伸ばした状態を保つために必要な柱のことです。
支柱を設置したら、支柱同士の間に親綱をピンと張った状態で取り付けましょう。実際に作業する際は、作業者が身に付けている墜落制止用器具を親綱に取り付けます。
水平親綱を設置する際は以下の点に注意しましょう。
- 親綱は必ずピンと張る
親綱は必ずピンと張りましょう。親綱が弛んでいると、作業者が屋根から墜落した際に地面へ激突するリスクが高くなります。
- メーカーが定めた親綱支柱同士の間隔(スパン)の長さにする
親綱支柱同士の間隔は、メーカーが定めた長さにしてください。親綱の距離が長いと弛みやすくなり、墜落した際のリスクが高くなります。
- 1スパンの作業人数を確認する
メーカーによって、1スパンの人数は異なります。必ずメーカーの取扱説明書を確認してください。
垂直親綱の設置方法
垂直親綱とは、建物に対して地上から垂直に固定する設置方法のことです。垂直親綱の設置方法として、大きく以下の2つがあります。
- はしごを使用する設置方法
- 操作棒を使用する設置方法
【はしごを使用した設置方法】
①ロープではしごの上部と脚部を建物に固定し、はしごに安全ブロックを設置します。
②安全ブロックのフックを安全帯のD環に連結後、はしごを登り、屋根の軒先側面にフック金具付き親綱を取り付けます。
③はしごと連結された安全ブロックのフックは外さず、軒先側面のフック金具付き親綱を持ったまま、棟を超えて反対側に移動します。
④反対側で軒先側面のフック金具付き親綱に安全ブロックを新たに設置し、安全帯のD環に連結したはしごの安全ブロックのフック外して、新たに設置した安全ブロックのフックをD環に取り付けます。
⑤反対側の軒先にフック金具を取り付けて固定します。
注意点:
- はしごの設置角度は約75度にします。
- はしごの先端は屋根軒先より60cm以上突き出すようにします。
- 昇降時は両手および片足の3点支持で行います。
【操作棒を使用した設置方法】
地上から操作棒を使用して垂直親綱(主綱)を設置する方法もあります。この方法は、屋根上に上がる前に安全対策を講じることができる利点があります。
①操作棒を使って、ガイドボール付きパイロットラインを屋根の上から建物の反対側へ通します。建物の反対側には、強固な建物やウェイトバケットなどに固定した主綱を準備しておきましょう。
②屋根の上から通したら、事前に準備した主綱にパイロットラインを仮で固定します。主綱を仮固定したら手前に引き戻し、操作棒を取り付けていた側の主綱を別の建物や樹木などに固定しましょう。
③固定したらスライドを主綱と連結させて、ハシゴを使って屋根に登り、棟の近くで安全ブロックと主綱をつなげます。
④つないだ安全ブロックのストラップが適切に機能するかをチェックしてから、安全帯のD環へ取り付けて、最後にスライドをD環から外しましょう。
親綱の関連器具
上記の親綱と関連して、屋根作業では以下のようにさまざまな関連器具を使用します。
- 墜落制止用器具
- フック
- 安全ブロック
- アンカー
- ランヤード
- 支柱
- 緊張器
- スタンション
それぞれについて簡単に説明します。
墜落制止用器具
墜落制止用器具とは、作業者が高所から墜落しないよう体に取り付ける装備のことです。大きく以下の2種類に分かれますが、「フルハーネス型」のほうが安全性が高く、2019年2月の法改正以降、日本国内の基準も高さ6.75m(建設業では高さ5m以上)では、フルハーネス型の着用が義務付けられています。
- フルハーネス型:胸や肩、腿などの複数箇所をベルトで固定するタイプの墜落制止用器具。墜落時の衝撃を分散して受け止められる
- 胴ベルト型:腰をベルトで固定するタイプの墜落制止用器具。墜落時の衝撃を腰のみで受け止める
装着時は必ず取扱説明書を参照し、以下のポイントを確認しましょう:
①腿のバックルを外し肩ベルトに腕を通す
②腿ベルトを通したら腿バックルを連結する
③肩バックルや腿バックルなどの位置を確認して、墜落制止用器具が弛まず、かつ締めすぎないよう、ベルトの長さを調節する
④胴ベルトを閉める
⑤胸ベルトを閉める
フック
安全帯のロープやストラップの先端にある部品です。丈夫な構造物や親綱などにつなげて、屋根からの墜落を防止します。
安全ブロック
作業者が墜落した際、地面に激突することを防止する器具です。墜落時に高速でストラップが繰り出されることで「ロック機能」が作動し、それ以上の墜落を阻止します。ショックアブソーバー付きやウィンチ機能付きなどの種類があります。
アンカー
安全ブロックやランヤード(後述)などを接続し、墜落を防止するポイントです。墜落時の衝撃に十分耐久できることが必要です。
ランヤード
上記の墜落制止用器具とアンカーを接続し墜落防止を行う器具です。合成繊維製のロープやワイヤーロープ、フック、D環などで構成されます。
支柱
親綱の固定を目的として利用する備品です。親綱を支柱に引っ掛けてピンと張り、その親綱を作業者が装備している墜落制止用器具とつなぐことで、墜落を防止します。
緊張器
ケーブルやワイヤーを適切な張力で保持するための装置です。親綱を支柱間ごとに固定する際に使用します。
スタンション
屋根など墜落の危険性がある場所に設置する仮の手すりです。墜落防護工とも呼ばれ、通路の縁や開口部などに設置されます。
屋根作業では「安全な移動」を心がけることも大切
屋根での作業を安全に完了させるには、装備だけでなく移動にも気を配ることが大切です。安全に移動するためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 後ろ向きで移動する際は細心の注意を払う。「防水シートを屋根に敷く」「工事状況を撮影する」などの場合、後ろ向きに移動することがあります。後ろ向きになると、バランスを崩し足場と手すりの間を抜けて墜落することもあるため注意しましょう。
- 屋根を踏み抜かないように細心の注意を払う。
- 補修予定の箇所など強度が弱い部分を踏み抜いてしまうと、そのまま墜落する危険性があります。踏み抜く危険のある箇所はなるべく避けましょう。踏み抜きにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、幅30センチメートル以上の歩み板を設け、防網の設置などの措置を講じましょう。
- 屋根から別の屋根へ乗り移ろうとしない。距離が離れている、屋根が濡れているなどの理由で滑る危険性がある場合は、無理に屋根伝いで移動しないようにしましょう。
- 強風の日は慎重に移動する
強風の日に資材を持って屋根を移動すると、風にあおられてバランスを崩す危険性があります。強風時に資材を運ぶ際は、複数人で慎重に運ぶなどで対応しましょう。
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上記で解説したように、屋根で作業を行う際はさまざまな基準をクリアすることが大切です。また、2019年2月に安全帯の構造規格の改正が施行され、事業者側にはより一層の安全意識を持つことが求められます。
このよう墜落防止に関する関心が高まる中で、「規則に沿って対策できているか不安」「どんな製品を使えばよいの?」など、疑問に感じている方もいることでしょう。作業者に安全に働いてもらうためにも、屋根作業に関する疑問は解消しておきたいところです。
墜落防止器具の使い方や具体的な対策方法などについては、弊社が提供する「墜落防止対策ガイドブック」でも紹介しています。墜落に関する知識を固めて安全な労働環境を整備できるよう、ぜひ一度ダウンロードしてみてください。
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T.I.Tradingの墜落防止製品
T.I.Trading株式会社では、「世界中の良品で日本の課題を解決する」というミッションをもとに、墜落防止商品だけでなく防犯システムや感染症対策用品など、幅広い製品を取り扱っています。
高所作業の安全性を高めるための製品は、弊社では「常設用墜落防止水平親綱HLL」を取り扱っております。。HLLは人の墜落防止専用に開発されたシステムであり、欧米の安全規格に基づき設計されています。安全性を担保できるのはもちろん、設置する構造物への負荷も軽減できるため、新設・既存の建物問わず活用できます。
他にも弊社では、今回紹介したランヤードやフルハーネスなど、屋根作業に必要な製品を取り揃えているため、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
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