親綱の強度の基礎知識と使用における注意点

親綱の強度は、高所作業の安全対策において重要です。命綱としての役割を果たすには、親綱の強度だけではなく、親綱を掛ける支柱への取り付け方にも注意しなければなりません。

今回は、親綱の強度など基礎知識に加えて、支柱に関する強度や親綱のメンテナンスについて解説します。適切な親綱の使用方法を知りたい方はぜひ参考にしてください。

親綱の基本情報

親綱は、建設現場などで高所作業者の転落を防ぐために使用する製品です。作業員が装着するハーネスなどの墜落制止用器具と接続して使用します。

素材は合成繊維(ナイロン)で作られたものや、金属製のワイヤーで強度を高めたものがあります。親綱には水平移動に使用する水平用と昇降時に使用する垂直用があり、さらに取り外しが可能な仮設用と常設用に分けられます。作業現場や目的によって、適した親綱を選ぶことが大切です。

建築現場では作業員が安全に作業を行うための環境を作ることが法律で定められています(労働安全衛生法第3条)。作業員が安全に作業を行えるよう、親綱や墜落制止用器具などを用意し、環境整備を行いましょう。

親綱の強度に関する基礎知識

親綱を使用して高所で安全に作業を行うには、親綱の強度について理解を深めておく必要があります。ここでは適切な親綱を選ぶために必要な親綱の強度について解説します。

強度についての基本

親綱の強度は、引張荷重(ひっぱりかじゅう)を指標とします。引張荷重を簡単に説明すると、親綱を引っ張ったときの力のことです。kN(キロニュートン)という単位で表しており、1kNは約100キログラムの重さに相当します。kNの数値が大きいほど、より多くの荷重に耐えることが可能で、親綱がどれだけの重さを支えられるのか把握できます。

親綱の強度を求める計算式は以下のとおりです。

切断面積とは親綱の断面の面積を表しています。材料の引張強度とは親綱の素材が耐えられる最大の引張応力のことです。断面積と引張強度の情報により、強度を計算することができます。

強度の規格と基準

親綱の強度には認定基準が設けられており、基準を満たした親綱の使用が推奨されています。

認定試験は、支柱用親綱のフックの鉤部に引張用金具を掛け、試験機に取り付けて引張荷重をかけます。11.5kN時の異常の有無と荷重の最大値を測定し、以下の基準を満たす必要があります。

フックがついていない親綱は、引張荷重をかけて切断したときの切断荷重が23.0kN以上ある必要があります。

親綱の強度に関する注意点

親綱を適切に使用するには、設置方法や張り方などいくつか注意点があります。それぞれ簡単に解説します。

設置方法について

親綱で安全性を確保するには、正しく設置しなければなりません。日本では、仮設工業会において、1スパン10m以下とすることが推奨されていますが、これは法律上の決まりではないため、使用するにあたっては、メーカーが指定する1スパンの距離内で使用する必要があります。

また、以下に該当する親綱は事故のリスクが高まるため、使用しないようにしてください。

  • ロープに切り傷等の損傷があるもの
  • 著しい摩擦又は溶断等の損傷があるもの
  • 親綱として使用中、落下衝撃を受けたもの

親綱1本で何人まで使用可能か

厚生労働省が公表した『墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン』によると、親綱は原則1スパン1人の使用が推奨されていますが、法的な義務ではありません。そのため、メーカーが指定する使用人数や仕様をしっかり確認し、安全上問題なければ、1スパンに複数人の運用も可能です。ただし、1本の親綱で複数人接続すると、墜落時の墜落距離が大きくなりますので、複数人で同時に使用する場合は、必ずメーカーの取扱説明書に基づき使用しましょう。

親綱の張り方

親綱を張るときは、たるみがでないように張ることが推奨されています。たるみがあると作業員がスムーズに移動できないうえに、強度を低下させてしまうため、適切にしっかりと張ることが大切です。

たるませないように張るには「緊張器」の使用が欠かせません。「緊張器」は親綱をたるませず、適切に張ることができる器具です。そのため、「緊張器」を設置することで、安全な作業環境をつくることが可能です。

親綱の強度は、適切な緊張器の使用と正しい取り付けに依存します。緊張器は支柱の所定の位置に、親綱がたるまない程度に張るように設置することが重要です。また、安全帯(墜落制止用器具)の使用を考慮した設置が必要です。

支柱に関する強度

親綱を安全に使用するには、支柱の強度についても理解しておかなければなりません。ここでは支柱の強度と安全性、取付方法について解説します。

支柱とは?

親綱支柱は、安全帯(墜落制止用器具)を取り付けるための設備です。鉄製(鋼製)とアルミ合金製があり、親綱支柱、親綱、緊張器などの要素を適切に組み合わせ、正しく設置・使用・管理することで作業現場の安全性を確保します。建築現場で使用する親綱支柱は、鉄骨組立作業等に使用される1種と枠組足場等の組立に使用される2種が一般的です。

支柱の強度と安全性

支柱の強度も親綱と同様に強度の基準が認定試験で定められています。認定試験では2本の支柱に親綱を張り、100kgの重りをつけて高さ1.45mから落下させたときの落下阻止の有無を確認します。

落下阻止試験で支柱上部の変形角度が45度以下であるなど、定められた強度基準をクリアしなければ認定を受けることはできません。作業員は作業のために安全帯(墜落制止用器具)や工具など、さまざまな道具を身に着けています。そのため、各メーカーが定めている製品の耐荷重を確認し、万が一のことがあっても十分な荷重に耐えれる製品を選ぶことが安全な作業現場をつくるうえで非常に大切です。

安全性を保つには、定期的な点検が欠かせません。支柱に以下のような異常がみられるときは修理などを行いましょう。

  • 親綱支柱システム各部材の変形・摩耗等の有無。
  • 親綱支柱の取付金具等の取付部の作動の異常の有無。
  • 緊張器の機能の異常の有無。

支柱の設置と取付方法

支柱は、メーカーが定める1スパンの距離内で設置します。支柱の取り付けには一般的にボルトやアンカー、専用の取付器具を使用します。取り付けるH形鋼などに、しっかりと固定してください。建築現場や親綱の設計に応じて異なるため、現場担当者は支柱の適切な設置とメンテナンスに注意を払い、高所作業を行う作業員の安全の確保に努めましょう。

親綱のメンテナンス

親綱の強度を保つには、定期的なメンテナンスが欠かせません。劣化や損傷があれば修理や交換が必要です。おもな点検項目と交換時期の目安について解説します。

点検項目

親綱の定期点検は劣化や損傷の早期発見に役立ちます。一般的な定期点検の項目は以下のとおりです。

交換時期

親綱は経年劣化によって、強度が低下する可能性があります。そのため、定期的な交換が必要です。交換時期は、親綱の種類や使用状況、製造元の指示によって異なります。使用頻度が高い場合や厳しい環境での使用が多い場合、劣化が早まる可能性を考慮しなければなりません。また、メーカーや業界団体による自主的な基準が設定されていることがあります。

作業員が安全に高所作業を行うためにも親綱の交換時期を把握し、定期的に交換を行うことが大切です。そのため、現場担当者や安全衛生担当者は、親綱の状態を確認して交換が必要かどうかを判断しなければなりません。

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親綱を適切に使用して高所作業の安全性を確保するのは、現場担当者や安全衛生担当者の義務です。2019年2月に墜落制止用器具の法改正により、建設現場の高所作業について関心をもたれている人も多いことでしょう。

T.I.Tradingでは現場担当者や安全衛生担当者に向けて『墜落防止対策ガイドブック』を無料で公開しています。「墜落防止のためにどうすればいいのか」「フルハーネスの正しい装着方法は?」などの疑問の解決に役立つ資料となっていますので、ぜひお役立てください。

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弊社では常設親綱にステンレス製のワイヤー(直径8mm)を採用した「常設用墜落防止水平親綱HLL」を扱っています。ほかにも、作業者の墜落防止に役立つ「フルハーネス」、親綱とフルハーネスを接続する「ランヤード」など、高所作業を安全に行うための製品を取り扱っています。

各製品は用途と目的、作業環境に応じて適切な製品を選ばなければなりません。どのような製品が適しているのかわからない場合は、T.I.Tradingがサポートいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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