1-3. 現場別事故事例(ケーススタディ)
事故事例に見る現状
現場では、ヒヤリハットのような未然のものから、死亡に至るような深刻な災害まで、常に危険を伴っています。特に、死亡事故に至る墜落・転落事故の事例から、危険性の「原因」と「対策」を検証します。
建屋の固定はしごからの墜落
建屋屋上へのアクセスのため、固定はしごを昇降。建屋屋上での点検作業が終わり、はしごをつたって地上に折り始める途中に墜落。固定はしごには背かごが設置されていたが、背かごには引っかからなかった。作業者はランヤードをはしごに引っ掛けずに昇降していた。
原因 | 対策 |
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ヒヤリハット活動とは
もう少しで怪我をするところだった」というような災害にならなかった経験を、災害防止に結びつける目的で始まった活動。自らのヒヤリハットを報告することで、作業手順の見直しなどに役立てます。
【ヒヤリハット事例】
事例1)生コン車のホッパー部分を清掃中足を滑らせ転落しそうになった
事例2)屋上の面積を測定中、パラペットを乗り越えそうになった
事例3)足場の組立工事中、足場板のツメが破損して、転落しそうになった
大型ソーラーパネル工事で足場からの墜落
大型ソーラーパネル建造物裏側で、高さ13m の仮設足場とソーラーパネルとの開口部で、 鉄骨の塗装準備作業。足を載せていた鉄骨から足を滑らせて墜落。作業する床に、落下防止網を張ることや墜落 制止用器具(旧:安全帯)を使用させる墜落 防止処置を講じていなかった。
原因 | 対策 |
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ダクトの補強工事中に墜落
製鉄所構内の焼却炉ダクトで、腐食劣化の補 強工事中の事故。ダクト天井板の西側腐食部が切れて、ダクト内に墜落。作業者は墜落制止用器具(旧:安全帯)は使用せず、自己判断で足場板を取り外して作業を行なうなど、安全な作業方法や順序などが十分に確立されていなかった。
原因 | 対策 |
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排水処理槽スラブ上で作業中に開口部から転落
農業排水処理場の建設中の災害。地下に埋設する排水処理槽(約10×10m/深さ4.9m)の上に2階建ての地上施設を建設中の作業。 排水処理槽のコンクリート打設作業で、不要なスラブ上の単管の片付け作業中、養生ビニールシートに隠れていた開口部(100cm×60cm)から4.9m下の排水構内のコンクリート床に転落。層内が塗装乾燥中のため、開口部にはフタがなく、覆いも設置されずに作業をしていた。作業手順が定められていなかった。
原因 | 対策 |
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天井クレーンから墜落
工場内の天井走行クレーンの点検作業中、ランヤードのフックを掛けかえる時にバランス を崩し、天井クレーン上から墜落。2名の作業者が狭いクレーン上で作業しており、作業手順が定められていなかった。ツインランヤード(二丁掛け)を使用していたが、作業者は1本のランヤードしか使用していなかった。
原因 | 対策 |
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親綱とは
親綱とは、作業現場で使用する墜落 制止用器具を引っかけるためのロー プです。 ナイロンやポリエステルなどの繊維質で作られた綱や、ワイヤーが入ったものなど耐久性の高いものがあります。
鉄骨組立て作業中に墜落制止用器具(旧:安全帯)の環が外れて墜落
12階建てマンションの6階部分鉄骨梁上でボ ルト締め作業中の災害。墜落制止用器具(旧:安全帯)のロープを鉄骨のタラップに通し、U字つりの状態で使用していた墜落制止用器具の取り付け環(カラビナ)が壊れ、作業者が17mの地上に墜落。墜落制止用器具がU字つり状態で使用できる構造でなく、一本つり用を改造し、規格に適合しない部品を取り付けて使用していた。
原因 | 対策 |
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U字つりと一本つりの違い
墜落制止用器具の「一本つり」は、作業場所に安定した足場があり、作業者が墜落制止用器具で身体を保持しなくても作業ができる場所で使用。「U 字つり」とは、電柱や鉄塔など安定した足場がない場所で、作業者が墜落制止用器具のロープをU字状 態にして体重を預けた体制で使用し、墜落・転落防止用のランヤードを併用します。2019年2月の労働安全衛生規則改正では、「胴ベルト型U字つり」が墜落制止用器具から削除されました。