3-2.胴ベルトによる災害について

胴ベルト型墜落制止用器具の安全上の問題点は、腰あるいは腹部の一点に荷重がかかることにあります。墜落が発生し、救助するまで時間がかかってしまう現場での胴ベルト型墜落制止用器具の使用には、墜落しないために細心の注意が必要です。その理由は、フルハーネスに比べ胴ベルト型墜落制止用器具は作業員の腰や腹部を圧迫し、呼吸を制限し、墜落・転落後の宙づり状態からさらに大きな災害につながる可能性があるからです。

宙づりによる死亡災害発生状況

〔事例1:グリップの誤使用による墜落〕

胴ベルト型墜落制止用器具の安全上の問題点は、腰あるいは腹部の一点に荷重がかかることにあります。墜落が発生し、救助するまで時間がかかってしまう現場での胴ベルト型墜落制止用器具の使用には、墜落しないために細心の注意が必要です。その理由は、フルハーネスに比べ胴ベルト型墜落制止用器具は作業員の腰や腹部を圧迫し、呼吸を制限し、墜落・転落後の宙づり状態からさらに大きな災害につながる可能性があるからです。

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グリップとは

グリップとは、ランヤードを親綱等に接続するための器具で、常時は垂直親綱に固定されているものです。

引き上げ(救助)には4人が必要

墜落で宙づりとなった被災者の引き上げ(または、引き下ろし)には、4人以上の人力とロープが必要です。落後、すぐに救助できない状態を想定した延命対策が不可欠といえます。

〔事例2:宙づりを想定した備えの不備〕

鉄塔間の移動訓練を行っていた際の事故。高さ約10mの電線から墜落して宙づり状態となった。約10分後には意識不明状態になり、約30分後に救助されたが死亡が確認された。本件では、胴ベルト型墜落制止用器具を使用していたが、仮にフルハーネスを使用していたとしても、宙づりが30分以上になると危険な状態といえる。このような環境では、延命処置のためうっ血対策ストラップなどの装備が望ましい。

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うっ血対策ストラップとは

うっ血対策ストラップは、墜落防止後宙づり状態時の股部への圧力を軽減し、うっ血抑制に機能します。左右腰部のケースからストラップを取り出し両足を乗せて使用します。

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〔事例3:フルハーネス使用は原則〕

ブランコでビル窓ガラスクリーニング作業中の事故。インロープがつり元から外れブランコ台から墜落しライフラインにより地面への墜落は避けられたものの、胴ベルト型墜落制止用器具で宙づり状態となる。被災者の救出には約1時間を要し、搬送先の病院で内臓圧迫等による死亡災害につながった。フルハーネスの使用は原則だが、長時間の宙づり状態を想定する場合、やはりうっ血対策ストラップなどの延命処置が求められる。

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胴ベルト型墜落制止用器具に加わる衝撃荷重

胴ベルト型墜落制止用器具での、墜落時に腰や腹部にかかる衝撃荷重の実験結果によると、下図のように0.5tから1t(およそ瞬時にドラム缶6本分に相当)にまで及ぶと想定されます。さらに、墜落したあと救出されるまでの間、身体は5cmの細い帯で全体重を腰で支えられます。そのことにより、身体へ大きな負担がかかり、重篤なケースにつながると考えられます。また、フックの位置によっても受ける衝撃が異なります。

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衝撃荷重とは

衝撃荷重とは、急激に加えられた荷重をいいます。 荷重の大きさは、力が加わる時間に反比例するので、短時間で力がかかるほど荷重が大きくなります。

胴ベルト型墜落制止用器具で宙づりになった時の注意点

胴ベルト型墜落制止用器具で宙づりになった場合、墜落直後の行動を注意することで、延命措置につながると考えられます。

1.墜落直後の姿勢の確保
同時に接続する人数が増えるほど、墜落時の距離が大きくなります。また、親綱に求められる強度も大きくなります。

2.腕でロープを掴み、頭部を上に保つ
頭部が下になるとうっ血し意識を失いやすいので、頭部を上に保つことが大切です。

3.うっ血対策ストラップによる延命措置(常時携帯すること)
うっ血対策ストラップを引き出し、ストラップに足をかけて立つ姿勢を保ちます。

4.トラロープをうっ血対策ストラップの代替品として
うっ血対策ストラップがない場合は、トラロープや介錯ロープで輪をつくり足をかける。この場合、ロープが逃げないよう、ロープとカラビナを固定します。

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1)身体を軽くする

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2)頭を上に姿勢を保つ

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3)ストラップで足を固定

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4)ロープで足を固定

墜落制止用器具で宙づり状態に見る問題点

墜落制止用器具で宙づりになった場合の救助は、自力または現場にいる他の作業員によって10分程度。消防署のレスキューを要請した場合20〜30分で救助が行われた場合、フルハーネスを正しく使用することで、救済の可能性が高くなると考えられます。

しかし、場所や状況によっては救助に1時間以上要する場合もあり、このことが命取りになりえます。つまり、安全性の高いフルハーネスを使用すること以外にも問題点があります。そのひとつが「レスキューのための対策」です。

レスキュー対策については、欧米ではすでに「レスキュー研修プログラム」が必須となっていますが、残念ながら、日本の行政や災害防止団体においては、未だ指導は徹底されておらず、今後の大きな課題といえます。また、欧米では墜落時に1人でも救助が行える「緊急レスキュー装置システム」の普及も進んでいます。

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