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墜落防止とレスキュー

墜落防止・レスキューの必要性

作業現場での高所から墜落、または開口部から転落して宙づり状態になった場合、被災者を救出するためには高度な技術を要することから、レスキューのための訓練は重要です。欧米では、ハーネスを使用する作業員はハーネス使用についての安全教育と合わせ、レスキュープログラムの教育があります。一方、日本国内においては、2019年2月の法改正により「一定環境(高所)での作業者を対象に安全衛生特別教育の実施」が義務づけられたものの、レスキュー教育については、現状においてその動きはありません。そのため、墜落救助には消防署のレスキューに要請をすることが多くなりますが、救出まで時間を要することで生命に関わるような二次被害につながるケースが少なくありません。

主な災害事例

マンホール内での硫化水素中毒事故のケース

下水道マンホール浚せつ作業中に発生した硫化水素中毒の事故。下水道マンホール浚せつ及び変状調査の作業を行うため、下水管の上流側と下流側をせき止め、上流側マンホールより水中ポンプを入れ、下水を汲み上げる作業。マンホール内の泥及び下水量は底床から50~60cmであった。作業を終えた作業者は、ステップを登り始め3~4段登ったところ(地上から深さ約11m)でマンホール底部に墜落した。他の作業者が救出のため底部付近まで降りたところ、被災者が仰向けに倒れていた。1人で被災者を動かすことができなかったため、地上に戻り、レスキュー隊に連絡し約30分後に被災者を救出したが、硫化水素中毒により死亡する。

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貯水構内での酸素欠乏事故のケース

水道施設の貯水槽内で数名での試掘作業中の事故。埋設管の深さを確認するためマンホールから貯水槽内に立ち入った作業者が貯水槽の底であお向けで倒れているのを、もう1人の作業者が発見した。現場に酸素濃度測定器、換気のための送風機、保護具などがなく、その状態のまま発見者が救助のために貯水槽内に入ったところ、貯水槽の底に墜落し二次災害となる。その後レスキュー隊により2名を救助されたが、2名とも翌日死亡する。当時、レスキュー隊が救助のために測定した酸素濃度は7%であったことから、被災者は酸素欠乏状態であったと推定される。

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タンク・マンホール内作業の危険性

タンク・マンホールなど開口部からの墜落については、はしごの昇降時に手や足を滑らせてしまうことのほか、空気が密閉される空間で酸素欠乏や硫化水素による災害や、下水道マンホールでの急な水位の上昇などが原因となる災害があります。また、先の事例のようにマンホール内で倒れた作業員を救出するために入孔した人が、同じように酸素欠乏や硫化水素中毒になり墜落するという二次災害のケースも少なくありません。特に、マンホール内での作業では、「酸素欠乏・硫化水素などの環境対策」「急な水位上昇に対する安全対策」「墜落を防止する対策」が必要です。

酸素欠乏・硫化水素などの環境対策

1)酸素欠乏危険場所の事前確認をする

タンク・マンホールのほか、ピット・槽・井戸・立て坑などの孔内が酸素欠乏や硫化水素発生・漏えい・流入の危険性がないかどうかを確認。

2)立ち入り禁止の表示をする

危険場所にあやまって立ち入らないような注意を促す。

3)作業主任者を選任する

酸素欠乏危険場所での作業は、選任された酸素欠乏危険作業主任者が作業指揮を行う。

4)特別教育を実施する

作業者に酸素欠乏症・硫化水素中毒の予防に関する特別教育を実施。

5)酸素濃度・硫化水素濃度を測定する(測定者の安全を確保する)

6)換気をする

作業場所の酸素濃度が18%以上、硫化水素濃度が10ppm以下になるよう測定と換気を続ける。

7)保護具を使用する

送気マスクなどの呼吸用保護具を着用。

その他、酸素欠乏症等防止規則第6条により墜落制止用器具の使用が義務づけられています。

墜落制止用器具使用についての規則

事業者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させ転落するおそれがあるときは、労働者に墜落制止用器具その他の命綱を使用させること。(高さが3m以内でも)さらに、墜落制止用器具を安全に取り付けるための設備を設けること。命じられた作業者はこれらを使用すること。(酸素欠乏症等防止規則第6条より要約)

急な水位上昇に対する安全対策

急な増水対策には、増水発生後だけでなく増水を予測して対応することも必要です。

1)現場を把握する

作業前に、天候による急な増水を把握するための情報を収集。

2)作業の中止・再開の基準を設ける

水位上昇の危険レベルを予測し、作業の中止と再開の基準をあらかじめ設定。

  1. あらかじめ避難手順の設定すること
  2. 常時安全器具等を準備しておくこと
  3. 危険予測などの情報収集と伝達方法
  4. 資機材の取り扱いについて

3)素早く避難するための準備をする

水位が中止基準になった場合、孔内の作業員が安全かつ迅速に避難できる対策を設定。

4)日々の安全管理を徹底する

毎回の作業開始時に、避難に関する情報や対応策などを作業関係者全員に周知を徹底。

《推奨される安全器具リスト》

■ 墜落制止用器具
フルハーネス型。救助時に迅速な引き上げのために、ウィンチと安全ブロックの組み合わせが望ましい。

■ 親綱
作業区内で流出を防ぐために設置。

■ 流出防止柵(ネット)
流出時のため下流に設置。

■ 救助用ロープ
退避時、地上から孔内の被災者を引き上げる時に使用。

救助時に迅速な引き上げのために、ウィンチと安全ブロックの組み合わせが望ましい。

■ 救命胴衣
急な出水で孔内の作業員が溺れないために使用。

■ 墜落防止レスキューシステム
マンホールやタンクからの墜落防止と救助のためのシステムを設置。ウィンチ機能付きの安全ブロックは、楽に被災者を引き上げられるので地上からの救出が可能。