1-4. 事故事例から見る安全対策

高所作業における法規制

高さ・深さ2m以上(身長1.7m以上は「頭頂3.7m」)の箇所で、機械設備組立・解体、点検、屋 根上・足場の組立解体、開口部などでの作業では、墜落・転落の危険性があります。安衛則(労働安全衛生規制)では、「墜落などによる危険防止」のため、作業現場での安全管理、衛生管理を制定しています。

安衛則(労働安全衛生規則)とは

労働の安全衛生について基準を定め た厚生労働省令で、安衛法(労働安 全衛生法)に基づいています。

〔作業床の設置など〕

第518条:高さが2m以上の箇所(作業床の端、開口部などを除く)での作業の作業床設置。

〔囲いの設置など〕

第519条:事業者は、高さが2m以上の作業床の端、開口部などで墜落の危険の恐れがある箇所には、囲い、手すり、覆いなどを設置しなければいけない。

〔安全帯などの使用・取付設置など〕

第520条:労働者は、第518条(上記)の場合において、安全帯(現:墜落制止用器具)の使用を命じられたときはこれを使用しなければいけない。
第521条:事業者は高さが2m以上の箇所で作業を行う場合は、労働者に安全帯(現:墜落制止用器具)などを使用させ、安全帯(現:墜落制止用器具)などを安全に取り付けるための設備を設けなければいけない。

2019年2月から新ルールによる法令・告示を施行されました。「安全帯」の名称が「墜落制止用器具」に変更。高さ6.75m以上で墜落制止用器具は「フルハーネス型」が原則。さらに、2022年1月には全面的に、現行規格品の着用・販売の禁止の流れです。

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フルハーネス義務化の法改正

2019年2月施行された新ルールによる法令・告示で、高さ6.75m以上でフルハーネス型の着用を義務付け。(建設業では高さ5m以上)高さが6.75m以下は、胴ベルト型(一本つり)使用可能。段階的に現行規格品の製造が中止され、2022年1月には全面的に、現行規格品の着用・販売の禁止への流れです。

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作業ケース別安全対策

ロープ高所での作業

高所(2m以上)での作業では、作業床・足場の設置が義務付けられています。しかし、足場の計画届けが不要なことや、管理が行き届かないこともあり、安衛則では「1.2本のロープ使用の原則(例外規定あり)」「2.作業従事者に特別教育受講の義務化」「3.作業計画で災害が発生した場合の救護処置を設定」を新たに制定しています。(平成28年1月1日改定)

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橋梁下部構点検での作業例

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のり面保護工事での作業例

はしごでの作業

はしごには「固定はしご」「移動はしご」があります。「固定はしご」は、建物に固定され、支柱は「山形鋼」「みぞ型鋼」、踏さんは「鋼棒」「細径」の鋼管が多い。「移動はしご」は、使用する場所に移動させるので、支柱・踏さんとも軽量なアルミ合金やFRP製が多く使われます。

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固定はしご

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移動はしご

はしごの傾斜

はしごは、種類によって設置する角度が決められています。「移動はしご」は、75度程度、「固定はしご」は90度(直角)です。

足場・屋根での作業

足場とは、高所に仮に設置された「作業床およびそれを支持する建造物」で、「わく組み足場」「くさび緊結式足場」「単管足場」、さらに「移動式足場」などがあります。足場は、高所での作業を安全かつ能率的に行う目的で、構造別や用途別により多くの種類があり、使用にあたっては「1.安全性」「2.作業性」「3.経済性」の要件が求められます。

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わく組み足場の例

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ストレート屋根の例

タンク・開口部付近での作業

建物の開口部「荷上げ用」「マンホール」「床点検口」や、その他「窓の開口部」「階段」「床 の溝部」「工事中・完成後の作業床端部」やタンク付近での作業は、特に墜落・転落の災害が多 発する場所です。 作業にあたっては、墜落制止用器具や保護帽などの墜落防止対策の徹底と合わせて、リスクアセスメントを取り込んだ作業手順書が重要となります。

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タンク付近の作業例

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開口部付近の作業例

リスクアセスメントとは

リスクアセスメントとは、事業場における危険性や有害の特定、リスクの見積もり、優先度の設定など、リスク低減処置の手順こと。建設業や製造業などの現場事業者は、これらの取り組みを努力義務とされています。

梁上移動の作業

「作業時のハーネス使用は常に二丁掛け」ということは、欧米では常識とされています。(日本国内では、法的義務はない)丁掛けとは、梁などの移動時においても、常にフックを2点掛けている状態をいい、より安全を確保できるとして、近年推奨されている方法です。

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欧米と日本の安全の考え方の違い

日本と欧米の災害統計では、建設業の死亡事故に限ると、日本はドイツの約1.5倍、イギリスの約3.8倍というデータ。この結果には、日本と欧米の安全の考え方が関係しているといえます。

【日本と欧米の安全の考え方】

日本 欧米
安全管理を徹底すれば、災害は防止できる 安全管理を徹底しても災害は防止できない
災害発生件数を低くすることを重視 災害の重さの程度の削減を重視
作業員の不安全行動が災害の主な原因安全教育の徹底が必要 作業員の不安全行動があっても、重大な災害にならないよう、設備の安全化が必要

 

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